東日本大震災後、歴史地震についての本が数多く出版されました。
その多くは理系の研究者によって書かれ、地震や津波の実態を明らかにするものです。
本書は視点を少し変え、地震や津波ではなく人間の方に焦点を当てた本です。
防災の知恵を先人に学び、災害とつきあい、災害によって変化していく人間の歴史を読み取ることができます。
磯田 道史 著「天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災」
本書では豊臣政権を揺るがした二度の大地震、1707年の宝永地震が招いた富士山噴火など、史料に残された「天災の記録」を繙いています。
本書で紹介されている「災害の時に生きのびる知恵」をいくつかご紹介いたします。
- 津波の時に金品にこだわってはいけない。
- 一度逃げたら、忘れ物を取りに家に戻ってはいけない。
- 一回避難しても、二時間やそこらで戻ってはいけない。(遠地津波は)周期が長いので、小さな津波がきて何時間もたってから最も大きな波が襲ってくることがあるからだ。
- 事前に家族で地震時にどうするか話し合っているかで生死が分かれる。
- あらかじめの避難計画を家族で話し合っておく。安全な場所と、そこにたどりつく時間や道筋などを考えておく。そういう事前の準備が大切。
- 自分の命は自分で守る。それぞれが安全な場所に逃げる。決して『おじいちゃんが大丈夫だろうか』と思って、逃げるのをやめてはいけない。
- 十数メートルに達する津波は防波堤などの土木建造物をもってしても対策が難しい。海に近い低地では、揺れたら逃げる。すぐ高いところに登るのが、大切である。
- たとえ、津波に逃げ遅れて体が水に浸かっても、あわててはいけない。津波に浸かりはじめた初期段階の時間は貴重なことがわかる。むしろ、脱出のチャンスとみて、あきらめず、津波の水の浮力の利用を考え、脱出を図らなくてはいけない。体が水に浸かれば、浮力で水に浮く。浮力を利用して建物の高いところに移動したり、浮遊物の上に乗ったり、流されない物を探してつかまったり、はじめの押し波の時に、パニックにならずに、冷静に有利な場所への移動を考え、がんばるのが大切である。引き波になってしまうと、さらに状況が困難になるからだ。
- 300年前の古文書は我々に物語る。老人・子どもは災害時の低体温症にとくに弱いこと。年長者は責任ある言動をしなければならないこと。疲労困憊時には弱気になり判断がにぶること。我々はこれらを自覚して、老いも若きも、最後まで避難を投げないことが大切だ。